彼
あのとき、友達は言っていた。
『お前たちが結婚したら100万円やるよ。』と。
それは、暗に無理だと言っていたわけで。
まぁ、結果それは正しかったのですが。
私の一方的な片思いにすぎなかったその恋は。
今でも時々夢というかたちで振り返ることがあるのです。
不思議だけど、その人は本当に夢に見ることが多い。
そして、それははっきりとは思い出せないにも関わらず、目が覚めた後も必ず遠く、空虚な気持ちだけを残す夢なのです。
あの人は、今、どんな人になったんだろう。
そう思っても、いつか書いたように、この先はもう2度と会いたくないと思う人です。
思い出だけの中でいい。
会うと、なんだか台無しになるような気がして。
変な言い方だけどね。
彼は、私のことを好きだとは思っていなかったけれど、特別な思いがあると思う。
とてもとてもたくさん色々なことがあったから。
ある時から、私は彼と連絡を取ることをやめた。
彼は、私と会いたいだろうか。
あの頃のことをどんな風に思い出すのだろう。
それとも、もう、思い出さないだろうか。
私も、彼も、もう、大人になった。
恋とか、愛とか、そういうことは言えない大人になったんだよ。
大切な相棒も、子供もいる。
こうして、時間はどんどん進んで、私たちの思い出は遠く遠く紙切れみたいに遠く遠くかなたに運ばれていって、忘れ去って、きっとこの世から居なくなるんだね。
記憶も、思い出も、何だか切ない。